昨今、ペットの健康長寿が話題となることが多いですが、一方、BCS(BCS:Body condition score)が4以上の肥満と診断されるペットも増え、動物病院で食事療法などの生活習慣指導を受けるケースも増えているようです。
そこで人間のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)判定基準と同様に犬と猫を対象にした判定基準が、日本獣医生命科学大学の新井敏郎教授らの研究チームによって策定され、今年の秋以降、東京都獣医師会に加盟する約700の動物病院で適用される見通しです。
人のメタボ基準とペットのメタボ基準を比較してみましょう!
それでは、人のメタボリックシンドローム判定基準と犬と猫を対象にした判定基準を比較してみましょう。(表「人間のメタボ基準とペットのメタボ基準表」参照)
ちなみに、人のメタボリックシンドローム判定基準の代表的な基準は、「IDF:国際糖尿病連合」、「NCEP:ナショナル・コレステロール教育プログラム」、「日本の内科系8学会」の3つに分けられ、日本のメタボ判定には、「日本の内科系8学会(日本動脈硬化学会,日本肥満学会,日本糖尿病学会,日本高血圧学会,日本循環器学会,日本内科学会,日本腎臓病学会,日本血栓止血学会)」がまとめた判定基準が適用されています。
人間のメタボ基準では、まず腹囲が男性85cm以上、女性が90cm以上に該当するかが前提になります。身長が160cmの方の腹囲と190cmの方の腹囲で差があるのは歴然ですが、あくまで体格は見ずに腹囲を最初の基準として判定します。
一方ペットのメタボ基準は、あご、くび周り、肋骨、おなか、腰回り、しっぽの脂肪のつき方やくびれが出来ているかを目視や触診で確認し、太り気味、やせ気味を判断するBCS(ボディコンディションスコア)という5段階の評価基準で判断します。
さらに人間の「長生きホルモン」と呼ばれ、今話題の「アディポネクチン」を必須項目の判定基準としているところがスゴイところです。
では、「長生きホルモン!アディポネクチン」についてご説明します。
表:人間のメタボ基準とペットのメタボ基準表
人間のメタボ基準 | ペットのメタボ基準 | ||||
---|---|---|---|---|---|
IDF | NCEP | 日本8学会 | 犬 | 猫 | |
必須項目 | 腹囲: 男性 90cm以上 女性 80cm以上 | なし | 腹囲: 男性 85cm以上 女性 90cm以上 | BCS:3.5以上 アディポネクチン:10μg/ml未満 | BCS:3.5以上 アディポネクチン:3μg/ml未満 |
追加項目 | 下記から2項目以上 | 下記から3項目以上 | 下記から2項目以上 | 下記から1項目以上 | 下記から1項目以上 |
血圧 | 130/85mmHg以上 | 130/85mmHg以上 | 130/85mmHg以上 | —– | —– |
中性脂肪 | 150mg/dL以上 | 150mg/dL以上 | 150mg/dL以上 | 165mg/dl以上 | 165mg/dl以上 |
総コレステロール | —– | —– | —– | 200mg/dl以上 | 180mg/dl以上 |
HLDコレステロール | 男性 40mg/Dl 女性 50mg/dL未満 | 男性 40mg/dL未満 女性 50mg/dL未満 | HDL40mg/dL未満 | —– | —– |
血糖 | 空腹時血糖値 100mg/dL以上 | 空腹時血糖値 110mg/dL以上 | 空腹時血糖値:110mg/dL以上 または HbA1c:6.0%(NGSP)以上 | 随時血糖?:120(mg/dl)以上 | 随時血糖?:120(mg/dl)以上 |
長生きホルモン!アディポネクチンとは?
NHK総合テレビ「ためしてガッテン」で放送(http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20151028.html)されてから、さらに話題となっているのが「長生きホルモン!アディポネクチン」。
脂肪細胞から分泌される分泌蛋白で、アディポネクチンを増やすことにより、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化、さらにがんの予防と改善の効果が認められてる重要な分泌蛋白なんです!
このアディポネクチンをペットのメタボ基準に取り入れた理由を「日本における飼育犬の早期肥満判定基準の策定」(日本獣医生命科学大学生理化学教室))」から引用すると「調査結果から、血漿インスリン濃度が肥満の早期新指標として有用である可能性が高まったと考えている。私たちは、インスリンだけでなく、コレステロールの分画(HDL、LDL、カイロマイクロン)の変化や脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンなど、脂質関連因子のいくつかの項目に注目し、肥満の早期診断の指標になる可能性を検証している。」と考察されています。
日本のペット医療・ヘルスケア分野の未来は明るいかもしれません。
肥満にさせない飼い主さまの食事管理が重要です。
ペットのメタボ基準が優れていることを説明いたしましたが、やはり飼い主さまがきちんと日々ペットのお世話と食事管理をし、ペットを肥満にさせないということが重要です。
ペットの正しい「必要なカロリー量の計算方法」を理解し、適度な食事と運動を心がけ、同時に飼い主さま自身の食事管理とお散歩などの適度な運動を取り入れれば、人もペットも健康で長生きできるはずです。
肥満は、さまざまな病気を引き起こす原因となり、病気になると高額な治療費もかかりますので、健康のためにも、余計な支出を増やさないためにも肥満にならないよう十分気を付けてくださいね。
それでは、飼い主さまとペットの健康で明るい日々をお過ごしください。